金曜倶楽部

食物語。

勇者は世界を救わない

当時は理解できなかった友人のハシヒラの気持ちを身を持って感じることができた。

 

 

高校生だった俺たちは部活に明け暮れつつも休みの日は精一杯遊んでそれなりに充実した学校生活を送れていたとおもう。

 

 

ある日ハシヒラの家に遊びに行った。漫画好きの俺はハシヒラの本棚を物色した。

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「いちご100%」

 特にイケてない中学生が可愛い過ぎるヒロインにチヤホヤされる漫画。中学生だった俺の性を目覚めさせた戦犯的な漫画だ。すでに完結している漫画ではあったが俺は結末を知らない。高校進学を機に俺は少年ジャンプを卒業していた。とは言え、たまにコンビニの立ち読みする程度にはまだ少年だった。

 

いい機会だ、いちご100%。読ませてもらうことにした。

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懐かしいヒロインたち。俺は西野が好き過ぎるあまり、ショートカット以外の女の子とは恋愛ができない呪いを20歳まで背負ってきた。

ハシヒラはこずえちゃんLOVEらしい。いちご100%を通じてそいつ自身が自覚していない奥底に眠る“性癖”のようなものがチラつくのが面白い。事実ヤツはロリ齢の離れた童顔の子が好きなのだ。ちなみに北大路好きは大体“童貞”だ。性癖云々の前に女を語らう土俵にすら上がってない者たちだ。俺の周りはそうだった。

 

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物語の終盤の18巻、もう東城の株がブチ上がり方の激しいこと。可愛い・・・。

さあ最終巻へと思いきや、ない。

最終巻がないのだ。

軽いヒスを起こしハシヒラになんでないんだと問い詰めるとヤツは意味不明なことを言い出した。

 

 

 

 

「・・・・物語を終わらせたくないんだ。」

 

 

 

 

 

 

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意味がわからない。終わるんだよ。終わらせないとダメなんだ。

それから俺は本棚に妙な違和感を感じたのを覚えている。マキバオー幽遊白書シャーマンキング電影少女ラブひな・・・最終巻だけがない。

あまりにも徹底された理解不能なポリシーに恐怖した。人は未知に恐怖する。それが安全か危険か判断できず、防衛上危険と仮定する心情だ。こいつは危ない。

その日以来ハシヒラ家の“完結”することを許されない漫画に一切の興味を示すことはなかった。

 

 

そんなハシヒラとも14年ほどの付き合いになる。俺がアイツと過ごしてきた中で、ヤツの考えが無意識に脳裏に焼き付けられたのだろうか。

 

 

最近、仕事が終わって帰宅するとすぐドラクエをプレイするのがルーティンワークになっている。

もうプレイしてから1ヶ月は経とうとしている。いつでもラスボスを倒しに行ける状態であるにもかかわらず俺はクリアをする気になれない。

 

ある不気味な感覚が俺を襲った。

 

 

 

 

 

 

“物語を終わらせたくない”

 

 

 

 

 

世界は魔王に支配されたまま闇に覆われている。

魔物に滅ぼされた国もいくつかある。死んだ仲間もいる。村人は不安に怯えたままだ。

いや、魔王を倒せる力を持ちながらも世界を救おうとせずモンスターをひたすら駆逐する勇者の怯えているのではないのか。

 

 

すまない

 

君たちの勇者は世界を救わない。