金曜倶楽部

食物語。

いい加減な性格

福岡には仕事で県外からやってくる者が多い。

よく見かけるのは長崎、宮崎、熊本、鹿児島の人間だ。その中で宮崎の人間の地元ラブの主張がどの県よりも強い。己を『宮崎人』と呼称するあたりなんかそうだ。 

南国育ちという風土的な問題なのか時間にややルーズな傾向にあるようだ。そんな県民性は沖縄だけで十分だ。

 

 俺が初めてバーデビューを果たした店が今泉にある『ペンギン』というバーだ。ここのバーテンダーも宮崎出身の人なのである。この店を訪ねてくる宮崎人も少なくない。店の裏には『どれみ』という宮崎の郷土料理専門の店まである。正直なところ、福岡の街が宮崎に蹂躙されているようで少々複雑な気持ちにもなるが、福岡にいながら宮崎の美味しい料理がいただけるのなら・・・と、前向きに考えるのである。先々週あたり、ペンギンのバーテンダーと『どれみ』に行ったがとても美味しかった。しかし焼酎の水割りが薄かったのはオコである。

 

この『バーテンダー』という名称についてだが、“BAR”はバー、酒場のこと。

そのままだ。では“TENDERとは。

調べてみると面白い。“世話をする人, 看護人;見張り人, 番人と出るのだ。

直訳すると“酒場の番人”だ。かっこいいではないか。しかしこのバーテンダーという言葉は意味深長のようだ。お客の好みに合わせてカクテルを作ることが必要とされるだけでなく、心地よく居座れる空間を作ること、お客の話の受け答え、迷惑なお客にも目を光らせ、さらには店の酒の仕入れから運営の責任まで一人で背負わないといけないのだ。自営業なら当然だという話だが、こう言葉に並べると大変なことじゃないか。

 

 この“TENDER”の精神はバーテンダーのみならず、福岡の飲食業界には広く浸透しているように思える。サービスが良いというか、上から目線になるかもだが、つまり“気が利く”ということだ。さらに言えば、商売っ気がないということ。さらにもっと言えば、“何か”をくれることだ。日本酒ならお猪口の升の下にさらに皿を敷いてくれたり、テーブルが寂しくなるとサッとツマミをくれたり、よく行くカレー屋なら勝手にご飯盛りまくってくれたり(ダイエット中だから逆に足が遠退いたけど)、そういう店は全国どこにでもあると思うが、福岡はその割合が増えたなと思う。前回に話したように、福岡のトレンドスポットの移り変わりの早さへの対策として行うお店もあるだろう。理由はどうあれ「また来てね」という気持ちは嬉しいものだ。

バーをはじめ、飲食、サービス業というのは対処の仕方一つ(特にクレーム)で売り上げに反映されるのだからシビアな世界だなと思う。

 

 話を宮崎に戻そう。宮崎人と福岡の人間にはある共通点が見受けられる。

“割といい加減”だということ。  

福岡には「せからしか」という方言がある。意味は「鬱陶しい」である。

宮崎には「てげてげ」という間の抜けた有名な呪文がある「適当」という意味だ。

要は、他県の人間からすると両県ともきっちりかっちりの性分とはやや離れているらしい。

そもそも“いい加減”という言葉も、正しくは“好い加減”ということなので、言葉にして聞くよりも悪い印象はないのだけれど。「いい加減だな、お前は」と言われるとグサッとくる。“アバウトな人間”と言って欲しい。

 

 昔に遡れば、博多は貿易の窓口として栄えていたわけで、異文化の交流が多かったに違いない。異文化に対して理解をするには物事を柔軟に考え受け入れなければならない。「まあ、いいじゃん。細かいことはさ。」と。

いい加減な県民性はそこらへんから生まれたんじゃないだろうか。

でも宮崎人はなんでいい加減なのか説明がつかないな。なんでだ。

 

 

しかし、ある程度はいい加減なところがないと物事は前に進まないだろう。

シャアにも行き詰まると言うじゃない。

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「ええい、ままよ。」